2018年8月21日(火)にポートランド振興局のキンバリー局長から紹介を受けたThe Reddという施設を食事会に出席されていたCentral Eastside Industrial CouncilのKate Merrillエグゼクティブ・ディレクターに案内してもらい、そちらでユニークなビジネスを展開されるB-Lineさんを訪問し、お話を伺ってきました。B-LineのCEO/創業者であるFranklin Jones氏は3年間富山県でJETプログラムの外国語教員として滞在されていたご経験があるとのことでした。
<The Redd>
このThe ReddというのはPeal地区にあるecotrustビルディングを管理するNPO団体 ecotrustが取り組まれているプロジェクトで、Pacific Northwestの地域に根ざしたfood エコシステムの構築を目指しています。B-Lineはその中核を担うベンチャー企業で、先日B Corporationという認証も取得された、とても優れたビジネスを展開される会社です。
具体的な事業内容は、電動3輪車でPortlandのEast地区を中心にランチやオフィス用品をデレイバリーするグリーンデリバリー事業と、その車体を使った広告事業、さらにThe Reddの倉庫や調理場施設をシェアし運営する複合事業を効率的にこなす事業を行っています。
Franklinさんは知人と2人でこの事業を始めて、最初は2人でデリバリーをするために3輪車を漕ぎ回っていたそうですが、今では20人の従業員と12台の電動3輪車を抱えるまで成長しているとのことです。
最初にFranklinさんが企業のアイデアを思いついたきっかけは、実は日本に住んでいた時の体験でした。日本では自転車をよく乗っていたので、ある時思い立って日本からなんとアイルランドまでベトナムやインドを経由して30ヵ国自転車で旅をした時に自転車のビジネスの可能性を強く感じたとのことです。また日本のほか、カリフォルニアなどでも教員をしていた経験から、コミュニティの重要性を感じており、いつかソーシャルアントレプレナーになるべく準備を進めていたとのことです。
そして単にデリバリーするだけでなく、そのユニークな車体、また車より遅く人の目に留まりやすいスピードを生かした広告媒体としても活用することにより、デリバリーの薄利だけど安定した収益と、広告のシーズナリティーのある利益の変動が大きいビジネスをうまくミックスしてより高い収益性を実現するポートフォリオを実現しました。
<B-Lineの電動3輪車>
さらに巨大な保冷設備のある倉庫貸しも加えることにより、その倉庫のオーナーから配達の仕事も受注できるようにしたり、実際に調理場を使っているVeganの方々用に開発されたスープ、フードイノベーションに取り組んでいる食品会社からのランチ配達の受注も受けています。実際B-Lineさんのサービスを使ってスモールビジネスを始めた会社が大きく成長して巣立っていくこともあるそうです。またそれらの成功例が次のテナントを呼んでくる好循環が生まれています。
フードデリバリーは朝食時間帯、昼食時間帯など時間が偏りますが、その隙間時間を使ってオフィスサプライをデリバリーして車体の稼働率をあげるとともに、広告媒体としての露出を高めることができるなど、うまく設計されたビジネスを展開されています。
<倉庫>
(ポートランドで有名な日本のラーメン店もこちらのお客様のようです)
一つ一つの事業自体はそこまで目新しくなくても、それらをうまく組み合わせることでイノベーティブなエコシステムが構築できるいい実例だと感心いたしました。B-Lineさんは今のスタイルを継承しつつ、シアトルやサンフランシスコなどもう少し広域でのビジネス展開を考えて行かれるとのことでした。
今回のインタビューで改めてスモールビジネスをスタートさせるためにはちょっとしたアイデアとビジョンがとても重要だと感じました。日本とは環境が異なりますが、日本でも応用できるヒントが多く含まれていると思います。B-Lineさんのほかにもこの地区には約40社ほどのベンチャー企業が集積しているとのことです。
Franklinさん、色々と起業の背景やビジネスモデルについてご説明いただきありがとうございました!
(訪問した翌日にもB Corporationの件で日本のメディアからの取材があるとのことでした)
<Franklin氏から電動3輪車の説明を受ける保坂区長と小林副会長>
(車体はイギリス製でちょっとした小型トラックより高価とのこと)
<調理場(Soup Cycle, New Foods Market)>
<The Reddがこの倉庫の裏に建設中の新しいフードマーケットのイメージ図>
事務局 井上